HACCP(ハサップ)について学ぶ

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HACCP(ハサップ)に取り組むためには、まずそれぞれの食品製造現場に潜んでいる食品事故リスクを洗い出していく作業が必須となります。

厚生労働省が配布している各業種ごとの手引書に従った衛生管理計画を実施するだけでも構いませんが、以下の12の手順を一つずつ進めて、現場それぞれの衛生管理プランを作っていくことが、本来のHACCPの流れとなります。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を実施していく上において、まずはスタンダードなHACCPの手順を、一般知識として一読しておくことをお勧め致します。

HACCPを実施する際の12手順(7原則)

以下に紹介するHACCPの手順に基づき衛生管理プランを作り上げていくメンバーを社内で選任し、それぞれの役割を決定します。外部の専門家をメンバーに入れても構いません。各部門の責任者がチームに入っていると、情報が集めやすくなります。社長一人だけがHACCPチームにならざるを得ないところもあります。厳密なルールはありません。

HACCPを進めるうえでの基礎資料として、商品に関する必要な情報をまとめた仕様書を作ります。原材料や賞味期限、保存方法など、商品表示を作る作業に似ていますが、容器や包材の情報などもまとめるところが特徴的です。内容については、サンプルをご覧ください。これらを商品単位ごとに作成するので、少しだけ大変です。

手順2で作成した「製品仕様書」の中に記入する内容の一つです。手順に含まれているので、これは必須項目となります。「どういう人に対して、どういう用途、食べ方で利用して貰う為の商品か」ということをまとめます。子供向けなのか、お年寄り向けなのか、業務用なのか? 加熱して食べるのか、そのまま食べるのか、解凍して食べるのか、など。この情報うが、後々のリスク分析において大切な情報になります。

製品が完成するまでの流れを図式化します(サンプル)。それぞれの作業にかかる時間や温度、運用条件なども記入すると、この作業工程表を見るだけで、作業の流れを客観的に見ることが出来るようになります。このフローダイアグラムの内容をもとに、後のリスク分析を行うので、記入間違いや漏れがないように時間をかけて慎重に作っていきます。準備作業のうち、最も重要な作業となります。厳密なルールはありませんが、詳細であればあるほどよいでしょう。

手順4で作成したフローダイアグラムに間違いや漏れがないかを、実際に現場作業を見て、表と照らし合わせながら確認していきます。複数の人間で行うとより効果的です。正しい情報をまとめないと、リスク分析が正しく行えなくなるため、入念に行いましょう。

この手順から実際の現場で発生する可能性のある食品事故に対する分析作業が始まりますので、ある程度の衛生管理に対する知識、経験などが必要となり、専門性が高くなります。完成したフローダイアグラムをもとに、作業工程ごとに原材料や作業内容に潜む危害要因(ハザード)について、危害の起こり易さや、起こった場合の重篤度を評価、分析しながら図式化し、それぞれの危害要因に対する管理方法を明確にしていきます。

危害要因をコントロールするために、特に厳重に管理する必要がある工程がどこであるかを決めていきます。一般的には「加熱」や「冷却」、「検品」など、中途半端な基準で行うと、最終製品にリスクが残ってしまうような工程が重要管理点(CCP)になります。CCPは必ず決定する必要があるわけではなく、厳重な管理を行わなくても安全に製造できるという根拠があるのであれば、「CCPなし」のHACCPもありえます。

手順7で決定した重要管理点(CCP)で実施する、製造上の基準を決めていきます。加熱の場合は「85℃以上90秒」や、冷却の場合は「1時間以内に10℃以下」など、数値を設定するのが一般的です。この基準は食品の安全を達成できるレベルの基準でなくてはならない為、殺菌条件などは科学的根拠や法的根拠を持った数字を設定する必要があります。

手順8で決めた管理基準を確認するための方法や頻度、手順などを決めていきます。温度を測る場合は、「いつ・どこを・どうやって」などを決定していきます。気をつけないといけないのは、確認する頻度が一日1回だけに設定したとしても、「製造した商品全体」の安全性を担保できる必要があるところです。確認頻度が少なすぎたり、確認手順がバラバラであれば、せっかく確認を行っても安全を証明する根拠の弱い記録になることが多いので、注意が必要です。

CCPで測定した数値が、基準値に比べて逸脱している場合に実施することを、先にルールとして決めておきます。逸脱レベルが許容レベルである場合と、許容できないレベルである場合とでは、実施する内容も変わってきますが、その両方をしっかりと規定しておくことが重要です。許容できないレベルの逸脱が起きた場合は、廃棄したり、二次加工したりする場合がほとんどですが、許容できるレベルの逸脱の場合は、改めて手直しを加える必要があるため、製造する食品や、CCPの内容によって、処置内容は様々となります。

今までに決定した管理方法は、現時点ではリスクをコントロールできるかもしれませんが、時間が経過したり、なんらかの条件が変わると、リスクをコントロールできなくなる可能性があります。なので、時間の変化や、条件の変化にしっかりと対応できるように、後々、必ず検証を行う必要があり、その内容やタイミング、手順を決めておきます。温度計が狂ってないか、時計が狂ってないか、計量器が狂ってないか、計測器の感度などが弱くなってないか、など計測装置の校正を検証とする場合も多いですが、実際に製造した食品を微生物検査に出すなども検証にあたります。今の管理方法で確実に安全性が保たれているのかを再確認してみる作業であり、PDCAのCに当たる部分なので、とても重要な手順となります。

CCPとなる工程でモニタリングを行った際の記録用紙と、記録の手順や頻度などについて規定します。このサイトでは、この手順で必要となる記録用紙を、いろいろなパターンでご用意させて頂いております。